勉強は本当にそんなに大切なのか?
「勉強だけが全てではない」ことは分かっているつもりでも、いざ自分の子どものこととなると、数字や順位で示されるテストの結果や偏差値に目を奪われ、取り敢えず「勉強しなさい!」とつい言ってしまいがちですよね。
それでは、いったい勉強以外の大事な事って何なんでしょう?
参考文献 「学力」の経済学 中室 牧子(Discover21)
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幼児教育と学力は無関係!?
就学前教育の重要性は、ペリー幼児教育プログラムの実証実験で明らかにされましたが(参照:子どもにはいつから勉強させるべき?)、次にこのプログラムが子供の何を変えたのかーというところにも興味深い結果が示されています。
一般的に幼児教育と言うといわゆる「IQが高い勉強ができる子を育てる」というイメージがありますが、この幼児教育を受けた子供たちのその後のIQの変化を統計的に調べた結果、教育を受けた子と受けなかった子を比べたときに、小学校入学前にはIQの差は確かに大きかったのですが、小学校入学とともに小さくなり、ついには8歳前後で差がなくなってしまっているという興味深い結果が示されました。
iQや学力テストで測定される能力のことを一般的に認知能力(≒学力)と呼びますが、このベリー幼稚園プログラムではその効果は8歳ごろで失われ、決して長期にわたって持続するものではなかったのです。
「生きる力」=「非認知能力」が子どもを変える!
それでは「一体何が子供を変えたのか?」と言う事ですが、それはこの実験では非認知スキルまたは非認知能力と呼ばれるものであるとされています。
これはIQや学力テストで測定される認知能力とは違う、「忍耐力がある」とか「社会性がある」とか「意欲的である」といった人間の気質や性格的な特徴のようなものを示す一般的に「生きる力」と言われているものです。
つまり、このペリー幼児教育を受けた子どもと受けなかった子どもを比較した結果、認知能力(≒学力)には、さほど差異は無かったが、非認知能力に大きな能力差が現れたのです。
非認知能力こそが人生を成功に導く鍵
その後の子どもの学歴・年収・雇用などの面で大きな効果を上げ、その効果が長期にわたって持続したことが明らかになったペリー幼児教育プログラムですが、その効果は一般的な学力を示す認知能力ではなく、非認知能力の向上をもたらしたとされています。
この非認知能力こそがその後の人生を成功に導く鍵なのです。
「やり抜く力」が自らの人生を切り開く原動力になる。
ペンシルバニア大学の著名心理学者、ダットワーク准教授によると、非認知能力が高い人の共通点として「やり抜く力」のポイントが高いことであるとされています。
教授の研究によると「非常に遠い先のゴールにむけて、興味を失わず、努力し続けることができる気質」を持った人は、様々な分野で成功する確率が高いとされています。
つまりは、子どもに就学前教育を受けさせることにより「 非常に遠い先のゴールにむけて、興味を失わず、努力し続けることができる気質」が育まれ、子どもの 学歴・年収・雇用等の面で成功する可能性が高くなるー。言い換えれば「自らの人生を切り開いてゆく能力」 が高くなる事が証明されたのです。
非認知能力を獲得する機会を奪ってはいけない!
自分の子供のこととなると、ともすれば数字で現れる認知能力(偏差値や学力テスト)の結果で一喜一憂してしまいがちですが、子供の人生を成功に導く鍵は数字に現れない非認知能力にあります。
「 誠実さ」「忍耐強さ」「社交性」「好奇心の強さ」これらの非認知能力は「人から学び獲得するものである」とされています。
学校とはただ単に勉強する場所ではなく先生や同級生から多くのことを学び非認知能力を養う場所でもあるのです。
塾通いや詰め込み教育など、認知能力の結果を追い求めることに必死になり、従来子ども達が遊びや社会との関係性の中で非認知能力を獲得する機会を失っているとすれば、子供の将来を考えると本末転倒だと言えるのかもしれません。