三日坊主から卒業しよう!アリVSキリギリス問題を解決

2020年6月14日

 アリとキリギリスの話は有名です。

 将来の為にコツコツ努力を続けるアリと今を享楽的に生きるキリギリスがいて、キリギリスはアリをバカにしていましたが、最後はアリさんに助けてもらうというお話です。
誰でも、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

 あなた自身は「アリorキリギリス」どちらのタイプですか?

 人には、だれでも「アリ的な側面」と「キリギリス的な側面」の二面性を持っています。
 この両者がバランス良く働いてくれればよいのですが、どうしても長期的な目標をたてても三日坊主で「キリギリスの方が優勢」という人は多いのではないでしょうか?
 私自身もアリさんにもう少し頑張ってほしいのですが、キリギリスの勢いはなかなか収まりません。

この熱い「アリVSキリギリス」問題を考えてみたいと思います。

参考文献 「先延ばし」で自滅する人の心理 池田新介

キリギリスはなぜこんなに強いのか?

 試験勉強で計画を立てたが、「ついテレビを見たりネットサーフィンをしたりして1日の予定がこなせない」とか「ダイエットの計画を立てて食事制限を自らに課したがついつい目の前のケーキに手が伸びてしまう」など私たち凡人の生活はキリギリスが優勢を保っています。

 なぜこのように目先の利益を優先させた先延ばし行動が起こってしまうのかー。

 これは人間の脳が目先のものを過大評価してしまう「現在バイアス」と言う性質を持っているからだと言われています。
 遠い先の利益は忍耐強く待っているのに目の前の利益になると待てなくなると言う傾向が強いのです。

 この現象は高い建物とその手前にある低い木を眺める場合に似ています。遠くから眺めると建物の方が高く見えますが、間近になると手前の木の方が高く見えます。
 手前の木が「ご馳走のような手っ取り早く手に入る小さな利益」、その向こうにある建物が「健康のような先にあるより大きな利益」と考えれば「現在バイアス」の話がよくわかります。 
 
 目の前の食料を「誰よりも先に食べてしまわないと生き延びれなった飢餓時代の遠い記憶」が脳の中に存在しているのかもしれません。

 ダイエット中に甘い食べ物を食べてしまうような計画にそぐわないだめな選択をしてしまうことを「選好の逆転」と言います。

 誰しもが、キリギリス的側面を持ち「選好の逆転」の誘惑に悩まされていますが、このような誘惑に負けず当初の大きな利益のために行動するためには「セルフコントロール(自制心・自己管理)」能力が重要になってきます。

アリさんの力が人生を成功に導く。

 セルフコントロール能力の重要さは、いたるところで証明されています。

 アメリカのある実証実験によると、人生の様々な局面(仕事・年収・家庭生活)における成功者の共通する性質として、「自制心と物事をやり抜く力」が強い事であるとされています。

 一般的に「勉強ができる」「IQが高い」というようなことよりも、「自制心と物事をやり抜く力=セルフコントロール能力」が強い人の方が人生を有利に生きていけるということなのです。

参照:勉強はそんなに大切なのか?

アリさん能力は消耗品

 禁煙やダイエットなど「頭では分っていても、行動が伴わない」ことの要因の一つに「セルフコントロール能力を司る意志力」は消耗品であるという事実が挙げられます。
 考えてみれば当たり前のことなのですが、「なんでもかんでも目先の誘惑に負けずに将来の目標に向かって努力しろ」といわれても、無理があります。
 
 意志力は消耗品であることを踏まえ、上手にその能力を使ってゆくことという意識付けが大切なのです。
 
 ストレスが高い生活習慣を送る人は、そのストレスに対して意志力を消耗させてしまうので、「目標に向かってセルフコントロール能力を発揮したくてもできない」という現象が起こってしまいがちです。

 大阪大学の「世帯所得と自制力」という調査によると「低所得家計の回答者ほど自制力が弱い」という所得と自制力の相関関係が認められました。

 お金がすべてでは無いと言いながらも、不安定な生活は意志力を消耗させてしまうことが分かります。

アリさんの戦闘能力を強化するために

それでは、セルフコントロール能力(アリさん的戦闘能力)を高めるためにはどうすれば良いのでしょうか?

平準化

 セルフコントロール能力を希少資源だととらえてみましょう。

 資源を無駄なく使うために、資源をならして利用することを経済用語では「平準化」といいます。

  「 セルフコントロール能力の 平準化」 とは、ビジネスや食生活など様々な自制心を消耗する仕事がある時に、偏りなくどの仕事もできるだけ同じように頑張ることで、無駄なくセルフコントロール能力を消費するという考え方です。
 例えば、仕事が忙しすぎたりすると、ついつい飲みすぎたり、トレーニングをさぼりがちになったりすることは、「平準化」が上手く機能していない状態です。

リターンが大きい仕事に注力することは、まちがいではありませんが、あまりにバランスを欠いた能力の使い方は、資源の無駄遣いに繋がると言われています。

習慣化

セルフコントロール能力を司る意志力には、当たり前のこととして織り込まれている一定の水準があります。
 本人が自己管理の仕事として特に認識するのはこの水準値を上回る部分であり、直接的に意志力を消耗させます。
 同じ自制でも一定の水準値の範囲内ならいわば、ルーティーンとして仕事に入らないわけです。そのため意志力が同じでも、水準点レベルが高い人ほど意志力を枯渇させることなくタフな自己管理が実行できます。

 セルフコントロール能力の水準点を上げるためには、タスクをルーティーンとして行う「習慣化」が有効です。
 特定の自制の仕事を繰り返し行うことで習慣化され、意志力を消耗させずその仕事が続けられるようになるのです。反復学習や規則正しい生活が推奨されるのはこのためです。

 また本人の将来の目標とりわけ自発的な動機に基づいた将来の目標は、知性の水準点レベルを上げる上で重要です。
将来の自己実現に明確な希望とイメージを持つ人ほど、より高いレベルの自己管理に意志力を投入できるのはこのためです。

 受験でも習い事でも動機付けが明確でない子供は、意志力を大きく枯渇されてやる気をなくしてしまうのに、自発的な動機を持つ子供の場合には、どんどん成果を上げていくのも同じ理由なのです。

プレコミットメント

 アリとキリギリスの二面性に直面しながらも、キリギリス的な将来の自分をあらかじめ縛って長期的な利益を確保する方法がプレコミットメントです。

   貯蓄がうまくできない人が、積み立て貯金の契約を結ぶのは将来の浪費的な自分を制約しておき、将来がんばって意志力を発揮しなくても貯蓄計画が実行するできるようにしているのです。

   ダイエットのために、「エスカレーターは使わない」とか「外食にはいかない」などのマイルールを設定して自分を律することも、プレコミットメントのひとつの方法です。

他人と比べすぎない

 セルフコントロールはある意味で「自分との闘い」なので、他人との比較しすぎるとモチベーションの低下に繋がることがあります。

「あの人は100出来ているのに自分は10しか出来ていない」とか「あの人と比べたら、こんな努力をしても無駄なのでは?」など他者との比較の中ではネガティブな感情が起こりがちです。

 他者との比較の中で自分の立ち位置を確認することは、重要なことではありますがそのことに捉われすぎると意志力を消耗させることに繋がるのです。

まとめ イチロ―選手の引退会見

 3:00過ぎからイチロー選手の「 セルフコントロール能力」の達人のようなコメントを聞くことができます。
 世界一のバットマンであるイチロー選手でさえ、「他人と比べることなどできず、自分のできることを積み重ねてきた」そのライフスタイルは多くの人に勇気を与えてくれるものでした。
「アリVSキリギリス」問題の解決に大きなヒントを与えてくれています。