「褒めて育てる」は効果なし?子供をやる気にさせる接し方とは

2020年6月14日

 子育てをしていると「褒めて育てる」べきか「叱って育てる」べきか?などと悩む場面はよくありますよね

僕たちが子供の頃は、完全に「叱って育てる」時代だったように思います。体罰も普通に行われていましたしね。

近頃は「褒めて育てる」時代に変わってきている様です。教師が体罰をしたら、新聞沙汰になるご時世です。

しかし「褒め方」を間違えると子どもの成長に思わぬ悪影響を及ぼしてしまうケースもある様です。

参考文献:学力の経済学 中室牧子(Discover21)  嫌われる勇気 岸見一郎 古賀史健(ダイヤモンド社)

「褒めて育てる」は効果なし?子供をやる気にさせる接し方とは

 「あなたはやれば出来る子よ」などと親の願望を込めた子どもに対する応援のしかたは、どの親でも一度はしたことがあるのではないでしょうか?

子供を褒めることは子ども自身の「自己肯定感」を高めて、「自分の人生を自ら切り開いて行ける力のある子ども」に育てることに繋がるとされてきました。

しかし、アメリカの教育専門家の研究では真逆とも取れる研究結果が発表されています。

コロンビア大学のミュラー教授らによる子どもに対する褒め方の実験によると『能力を褒めることは、子供のやる気を蝕む」という衝撃的な結果が示されたのです。

実験結果を要約すると、「頭がいい」など能力を褒められた子どもは、例えばテストで良い点を取れている時は良いのですが、一旦わからない箇所が出てきた時=挫折を感じると「自分には才能がない」「頭が悪いからしょうがない」と諦めてしまう傾向があるそうです。

それではどの様に褒めれば良いのかというと「あなたはよく頑張った」などと努力を褒められた子どもは、挫折感を感じた時に「自分の努力が足りない」と受け止め、困難を乗り越える努力を継続していける子どもに育つ傾向が見受けられたとのことです。

つまり「努力を褒められた子どもは困難に立ち向かうやる気が起きやすい」のですが「能力を褒められた子どもは困難に立ち向かうやる気が蝕まれる」という結論に達したという訳です。

「褒めない」=フラットな親子関係のあり方とは

人は褒められることにより「自分には能力がない」という信念を形成する

 「褒める」行為については、ベストセラーになった「嫌われる勇気」で有名になったアドラー心理学においても「人は褒められることによって”自分には能力がない”という信念を形成していく」という「褒め育て」全盛の子育て世代にとっては、衝撃的な内容が紹介されています。

ここでは「褒める」という行為は「能力のある人が、能力の無い人に下す評価」という側面が含まれているとされています。

「相手に褒められたい」という基準での行動は「他人の価値観の枠で行動する」ということであり、いわゆる「忖度行動」が上手く出来ることに過ぎない。

「自分自身の価値観に基づいた行動習慣」が上手く行われないと「自尊心が育成されず」結果として「自分には能力がないという信念形成」に繋がるという訳です

例えば、友人の家の掃除を手伝って相手から「よく出来ましたね」と褒められると確かに上から目線を感じてしまいます。そこは「ありがとう」感謝の気持ちが正解ですよね。

しかし、これが自分の子どもが家の掃除を手伝ったら「えらいね」「よく出来たね」と褒めることは普通にあります。

これは、アドラーによると親子関係が縦の関係になっているからだと言われています。

「縦の関係」から「横の関係」へ

 確かに「友人関係などフラットな横の関係」だと奇妙に聞こえる「褒め言葉」は縦の人間関係(親子関係・上司部下など)では自然に聞こえてしまいます。

アドラーは全ての人間関係において「縦の関係性」を否定しています。人間は生まれた時から対等な「横の関係性」であるべきであると説いています。

「縦の関係性」の人間関係から「競争意識」が生まれ「優越感」と「劣等感」によって人間関係は悩ましいものになってしまうというのです。

自分の子どもが初めて「一人歩き」をした時や「一人で自転車に乗れた時」に自然と「よくやった」と褒めることは自然にあると思います。

アドラー的に見るとそれは「縦の人間関係」なのかもしれません。

個人的にはそれが悪い行為だとは思いませんが、子供の成長に合わせて「縦から横へ」人間関係が移行してゆくことが大事なのではないかと解釈しています。

[まとめ] 「自分自身で人生を切り開いてゆく力」を持った子どもに育てるために大事なこと

  このように人を「褒める」という行為にはいろんな問題点が隠されています。

ほめ殺し」という言葉もあるように無闇な褒め言葉は、相手に知らぬ間にダメージを与えてしまうことがあるのです。

確かに、周りから見てあまりにチヤホヤと育てられた子どもは困難な場面ではひ弱な印象があります。

困難を乗り越え「自分自身で人生を切り開いてゆく力」を持った人になるためにも子どもを褒める際には以下のことに気をつけた方がいいようです。

教育的観点  子供を褒める際は、能力よりも努力を褒めること

心理的観点  子どもの成長と伴に、「親子関係=縦の関係」で接することから「対等な関係=横の関係」に切り替えてゆくことを心がける